おススメドラマ『BORDER(ボーダー)』感想

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2014年 日本

おススメ度:★★★★★

 

「BORDER」というドラマを観ました。ジャンルとしては刑事サスペンス。

 

ただし、普通の刑事モノとは違うのは、主人公が「死者と対話できる」という点。おもに殺された被害者たちと対面し、会話を交わすことで事件を解決していきます。

 

といって、単純に「特殊能力を持つ主人公が、どんどん事件を解決する話」では終わらないのが、このドラマの特徴です。

 

どう転ぶか分からない脚本、緊迫感の漂う世界観、迫真の演技など、ドラマを面白くさせる要素が詰まった力作です。

 

ドラマ冒頭で、あることがきっかけとなり、主人公・石川(小栗旬)の前に死者が現れるようになります。死者は石川にだけ見え、石川とだけ話ができます。刑事の石川は、「事件に遭った被害者から犯人の情報を聞き出せる」という、巨大なアドバンテージを手に入れます。

 

が、一見無敵に思えるこのアドバンテージ、万能ではありません。

 

なぜなら、殺された被害者から「犯人が誰なのか」を聞き出せても、証拠がなければ逮捕できないからです。


主人公・石川は、そのジレンマに苦しみながら、だんだんと精神がすり減っていってしまいます。ちなみに死者は事件の被害者とは限らず、自殺した犯人の時もあります。そして、火葬されるまでは、その姿を現すとのこと(てことは火葬しない国の死者は、土葬されるまでだったりするのかもしれない)。

 

主人公の石川は孤独です。

 


死者の姿が見え、死者と話ができるのは、石川ただ一人。そして「死んだ人が見える、話ができる」なんてことは、他人には打ち明けられません。

 

殺された死者から、犯人の情報を聞き出して捜査を進めようとしても、周囲の人間からは理解されません。「一体何を根拠にそう思うのか」と、班長の市倉(遠藤憲一)や、同僚の立花(青木崇高)から、いぶかしげな目でみられてしまいます。それがまた石川の孤独感を増します。

 

唯一、検視官の比嘉(波瑠)だけが、石川の身に何かが起こっていることを察知し、石川も比嘉に対しては心情を打ち明けることがあるものの、死者が見えることまでは話せません。比嘉も、さすがにそこまでは分かりません。そのため、この二人の間にもまた、壁があります。 


そんな石川の孤独感を、表情や、目つきや、わびしげな立ち姿といった形で、小栗旬が好演しています。全身を使っての演技です。

 

良い俳優はセリフなしでも、観る側に色々なことを伝えてくれるものですが、このドラマの小栗旬はまさにそんな感じです。彼の真骨頂はこういうシリアスな役なんじゃないかと思います。

 

このドラマ、全体的にクールでシリアスな空気が流れているのが、自分好みでした。主要キャラは皆、淡々とした口調で、普通に落ち着いて話します。かつ、常に緊迫感が漂っていて、決して退屈しない、そんな作品です。

 

また、毎回ハッピーエンドで終わるとは限らないので先が読めません。そういう作品は、やはり観ていて面白い。結末が読めない面白さです。

 

「死者と対話できる」という、ややもするとチープなものになりやすい設定ですが、演出・脚本が良いのでそう感じさせません。「死者」の話ということで、観ていて切なくなるというか、心を揺さぶられる話が多いです。

 

てなわけで、これはおススメのドラマです。

 

ちなみにドラマ本編としては全9話で、そこでいったん話は終わりますが、その後にTVスペシャルとして続編「BORDER~贖罪~」が製作され、それをもって完全版のような形で完結します。